【協議離婚が約9割】「大ごとにしたくない」が招く悲劇。なぜ離婚協議書を作らない人は後悔するのか?
「離婚は考えているけれど、裁判なんてテレビの中の話。お互いの話し合いで穏便に終わらせたい」 「周りの友人も『離婚届を出して終わりだったよ』と言っているし、わざわざ書類を作るなんて大げさな気がする」
当事務所にご相談にいらっしゃる30代から50代の女性の多くが、最初はこのようなお気持ちを抱えていらっしゃいます。長年連れ添った(あるいは様々な思いを抱えて過ごした)夫との関係を終わらせるにあたり、「もうこれ以上、波風を立てたくない」「早くスッキリして新しい生活を始めたい」と願うのは、ごく自然なことです。
しかし、行政書士として数多くの離婚相談に向き合ってきた立場からお伝えしなければならない「残酷な現実」があります。 それは、「話し合い(口約束)だけで離婚をした女性の多くが、数年後に経済的・精神的なトラブルに巻き込まれ、深く後悔している」という事実です。
今回は、「みんなはどうしているの?」「本当に書類なんて必要なの?」と迷われているあなたへ、統計データという「客観的な数字」を交えながら、離婚協議書(および公正証書)を作成しないことの本当のリスクについてお話しします。
1. みんなはどうしてる?日本の離婚の「約9割」の真実

まず、「他の人はどうやって離婚しているのか」という疑問にお答えしましょう。
厚生労働省の人口動態統計によると、日本の離婚件数のうち約88%(およそ9割)が「協議離婚」です。 協議離婚とは、家庭裁判所を通すことなく、夫婦間の話し合いで合意し、役所に離婚届を提出するだけで成立する一番シンプルな離婚方法です。調停離婚が約10%、裁判離婚はわずか1〜2%に過ぎません。
つまり、あなたが「話し合いで終わらせたい」と考える通り、世の中のほとんどの夫婦が話し合いで離婚を成立させています。
しかし、問題はここからです。 約9割の人が話し合いで離婚しているにもかかわらず、「離婚後の条件について、きちんとした法的な書面(離婚協議書や公正証書)を残している夫婦」は驚くほど少ないのです。
例えば、未成年の子どもがいる夫婦の離婚において、「養育費の取り決めをしている」割合は、厚生労働省の調査(令和3年度 全国ひとり親世帯等調査)によると46.7%にとどまっています。半分以上の夫婦が、子どものためのお金について明確なルールを定めないまま離婚届を出してしまっているのです。 さらに、その取り決めを「公正証書」という最も確実な法的書類にしている人は、さらに一握りです。
「みんな話し合いで終わらせているみたいだから、私もわざわざ書類なんて作らなくていいよね」 この思い込みこそが、後々の大きなトラブルへの入り口となってしまいます。
2. なぜ書類を作らない?女性たちが抱える「心理的な壁」
客観的に見れば「書類を残した方がいい」と分かっていても、いざ自分のこととなると、作成をためらってしまう女性が大半です。そこには、女性特有の優しさや疲れが影響しています。
- 「相手を疑っているみたいで、大ごとにしたくない」 書面を作る=相手を信用していない証拠、と捉えてしまい、最後の最後で相手を怒らせたり、揉めたりするのを避けたいという心理です。
- 「夫は『ちゃんと払う』と言ってくれているから」 今は申し訳なさそうにしているし、子どものことは可愛がっているから、口約束でもきっと約束は守ってくれるはず、と信じたい気持ちがあります。
- 「話し合うこと自体がストレス。早く解放されたい」 これが一番多い理由かもしれません。離婚に至るまでの精神的疲労がピークに達しており、「お金はいらないから、とにかく1日でも早く縁を切りたい」と、自身の権利を自ら手放してしまうケースです。
あなたの気持ちは痛いほどよく分かります。しかし、これらはすべて「今の感情」に基づいた判断です。離婚は過去の清算であると同時に、これからの何十年という「あなた自身の未来」のスタートラインでもあります。今の疲れを理由に、未来の安心を手放してはいけません。
3. 数字が証明する「口約束の限界」。後から襲いかかるトラブルの現実
では、口約束だけで離婚した場合、どのような未来が待っているのでしょうか。 ここで、もう一つの衝撃的なデータをご紹介します。
先ほどと同じ厚生労働省の調査において、母子家庭で「現在も養育費を受けている」と答えた割合は、わずか【28.1%】しかありません。「過去に受けたことがある(今は途絶えている)」が15.6%、「一度も受けたことがない」がなんと56.9%にも上ります。

つまり、7割以上のシングルマザーが、元夫からの経済的支援を受けられずに孤軍奮闘しているのが日本の現実です。
なぜこんなことが起きるのでしょうか? それは、人間の心と状況は時間が経てば変化するからです。
- 元夫の収入が減った、リストラされた
- 元夫が再婚し、新しい家庭にお金がかかるようになった
- 時間が経ち、子どもへの情が薄れてしまった
「あんなに『絶対払う』と泣いて約束したのに…」と後悔しても、口約束やLINEのメッセージ程度では法的な強制力はありません。「言った・言わない」の泥沼の争いになり、最終的には泣き寝入りをしてしまう女性が後を絶たないのです。
養育費だけではありません。
- 慰謝料の分割払いが数ヶ月でストップした
- 財産分与で約束していたお金が振り込まれず、着信拒否された
- 家の住宅ローンを夫が払う約束だったのに滞納され、連帯保証人である自分の元に督促状が届いた
これらは決して珍しい話ではなく、行政書士である私のもとに日々寄せられる「リアルな悲鳴」です。大ごとにしなかった代償は、数ヶ月後、数年後に何倍にもなってあなたを苦しめる可能性があるのです。
10人で考える養育費のリアル
母子家庭の母親10人のうち、養育費を払い続けられている元夫はたった3人(緑)。残りの7人は不払いです。10人して考えるととてもわかりやすくありませんか?

4. 【年代別】あなたの未来を守るために、離婚協議書で決めるべきこと
女性のライフステージによって、離婚後に直面するリスクや守るべき権利は大きく異なります。年代別に、なぜ書面が必要なのかを見ていきましょう。
30代のあなたへ:子どもの未来と、自身のキャリア構築のために
まだお子さんが小さく、これから教育費が本格的にかかってくる30代。一番のリスクは「養育費の未払い」と「面会交流のトラブル」です。 進学のタイミングで養育費の増額はできるのか、特別な医療費がかかった場合はどう負担するのか。また、元夫と子どもを月に何回、どのように会わせるのか。これらを詳細に決めた離婚協議書は、あなたが仕事と育児を両立し、子どもを守り抜くための「最強の盾」になります。
40代のあなたへ:生活基盤の再構築と、複雑な財産の精算のために
子育てもひと段落しつつある一方で、夫婦で築き上げた財産が複雑化しているのが40代です。持ち家の名義や住宅ローンの残債、預貯金、学資保険の解約返戻金などをどう分けるか(財産分与)。また、結婚期間中の厚生年金記録を分割する「年金分割」の手続きも忘れてはいけません。再出発に向けた生活資金を確実にするため、曖昧な清算は絶対にNGです。
50代のあなたへ:見据えるべきは「老後の安心」。熟年離婚の落とし穴
子育てが終わり、夫の定年退職が見えてくる50代での離婚。ここで最も重要なのは「老後資金の確保」です。現在ある財産だけでなく、将来支払われる「退職金」の分割割合もしっかりと取り決めておく必要があります。長年専業主婦やパートで家計を支えてきた場合、十分な財産分与や年金分割を受けられないと、離婚後に「老後破産」に陥るリスクが高まります。あなたの長年の貢献を、きっちりと書面で形に(お金に)換える必要があります。
5. ただの紙切れにしない。強力なお守り「公正証書」の力
ここまで「離婚協議書」の重要性をお話ししてきましたが、実はもう一歩踏み込んでいただきたいことがあります。それは、作成した離婚協議書を公証役場へ持ち込み、「執行認諾文言付き公正証書(きょうせいしっこうにんだくもんごんつき・こうせいしょうしょ)」にすることです。
これは簡単に言うと、「もし約束通りにお金を払わなかったら、裁判を起こすことなく、すぐにあなたの給与や財産を差し押さえても文句は言いません」という強力な約束を交わした公的な文書です。
通常の離婚協議書(私製証書)では、相手が支払いを止めた場合、まずは裁判を起こして勝訴しなければ給料の差し押さえができません。しかし、この公正証書を作っておけば、いざという時にすぐに行動を起こせます。 この「プレッシャー」があるからこそ、元夫は未払いを起こしにくくなるのです。公正証書は、相手を攻撃する武器ではなく、約束を守らせるための「強力なお守り」です。
6. 行政書士へ依頼するということ
「法的な難しい言葉が並んだ書類を、自分ひとりでミスなく作れる自信がない」
もし今、そんな不安を感じているのなら、どうか一人で抱え込まないでください。そこで頼りになるのが、私たちのような専門家です。
ただ、中には「専門家に相談するなんて、なんだか裁判を起こすみたいで大ごとになりそう……」とためらう方もいらっしゃいます。ここで大切なのは、「弁護士」と「行政書士」の違いを知っておくことです。
弁護士と行政書士、何が違う?

- 弁護士とは: あなたの「代理人」となって相手と直接「交渉」をしたり、裁判所で「争う」ことができます。対立が激しく、自分たちでは話し合いにすらならない場合に心強い存在ですが、その分どうしても「対決姿勢」が強調されやすく、費用も比較的高額になります。
- 行政書士とは: 夫婦間で話し合って合意した内容を、法的に不備のない「契約書(離婚協議書や公正証書の原案)」という形にまとめる書類作成の専門家です。代理人として相手と交渉することはできませんが、だからこそ「相手と喧嘩をせず、穏やかに、かつ費用を抑えて円満に解決したい」という方にぴったりです。
行政書士に依頼することは、「相手を攻撃するため」ではありません。 むしろ逆です。感情的になりがちな離婚の局面において、法律という客観的なルールに基づいた「公平な着地点(離婚協議書の原案)」を提示することで、無駄な揉め事を防ぎ、スムーズで温和な合意へ導くのが私たちの役割です。相手に「行政書士という専門家に入ってもらって、お互いのために公正な書面を作ろう」と提案することは、むしろ誠実で穏やかな解決の第一歩となります。
千葉県市川市にお住まいなら、市政も「公正証書」を応援しています!
さらに心強いことに、あなたが市川市にお住まいであれば、離婚時に「公正証書」を作ることを市役所が公式に後押ししてくれています。
市川市では、ひとり親家庭が養育費をしっかりと確保できるよう、「公正証書等作成手数料等補助金」を設けています。これは、将来の養育費不払いを防ぐための「強制執行認諾約款付き公正証書」を作成する際、一部の金額を補助してくれる制度です。
「公正証書の大切さは分かったけれど、作成費用が心配……」 そんなとき、市川市の温かいサポートがあなたの「公正証書づくり」を経済的にも応援してくれています。これは、子どもを育てる母親にとって非常に心強い追い風ですよね。
投稿者プロフィール

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2児の母。
市川で山田弓行政書士事務所を開業。
専門は遺言書作成、相続関係手続きサポート、離婚協議書作成業務。
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