危急時遺言(一般危急時遺言)とは?
遺言を残したいと考えていても、疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った人が、通常の遺言書を作成する時間的・身体的余裕がない場合があります。
民法では、そうした差し迫った状況下にある人を救済するため、特別の方式による遺言(特別方式遺言)の一つとして「危急時遺言」を定めています。
主な特徴とメリット
- 緊急時の救済措置: 病状の急変などにより、公証役場に出向いたり、たとえ出張してもらっても時間的な余裕がない、自筆で遺言書を書いたりできない場合でも遺言を残せます。
- 口頭による遺言: 遺言者が自分の口から遺言の趣旨を話し、それを証人が筆記するという方法をとります。
危急時遺言が認められるための厳格な要件
ただ、偽造や本人の真意ではない遺言を防ぐため、法律で非常に厳しい要件が課されています。
- 死亡の危急に迫っていること
- 病気の急変、重篤な怪我などにより、文字通り「死が間近に迫っている」客観的な状況が必要です。(担当医に連絡し病状を確認いたします)
- 証人3人以上の立ち会いが必要
- 利害関係のない(相続人やその配偶者、未成年者などではない)3人以上の証人が全員同時に立ち会う必要があります。
- 遺言者の口述と筆記・読み上げ
- 遺言者が、証人の1人に対して遺言の趣旨を口頭で伝えます。
- 伝達を受けた証人がそれを筆記し、これを遺言者と他の証人に読み聞かせ(または閲覧させ)ます。
- 内容の承認と署名・押印
- 遺言者と各証人が、筆記された内容が正しいことを確認・承認し、それぞれ署名・押印します。
- 家庭裁判所の確認手続き(超重要)
- 作成された危急時遺言は、そのままでは効力を生じません。作成後、遅滞なく(一般的には20日以内など速やかに)家庭裁判所に請求し、その遺言が遺言者の真意によるものであるかどうかの「確認」を得る必要があります。
【重要】危急時遺言には「6か月の有効期限」があります
危急時遺言は、あくまで「一刻を争う緊急事態」のための例外的な救済措置です。そのため、法律では「危機を脱した後は、通常の形式で遺言をやり直すべき」という考え方がとられています。
具体的には、民法第983条において以下のように定められています。
民法第983条(特別の方式による遺言の効力) 「特別の方式による遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から六か月間生存するに至ったときは、その効力を生じない。」
つまりどういうこと?
- 病気やケガが回復した場合: 危急時遺言を作成した後に、手術が成功したり病状が回復したりして、「自分で自筆証書遺言を書くことや、公証役場に行って公正証書遺言を作ることができる状態」になったとします。
- 6か月経過すると失効します: その状態になってから6か月間生存し続けた場合、過去に作成した危急時遺言は自動的に効力を失ってしまいます(無効になります)。
公正証書遺言も作成
危急時遺言を作成しても、あらためて「公正証書遺言」などの確実な形で遺言を整え直すことが非常に重要です。